なぜ「ふぁぼ」でなければいけないか
ユーザが示せる意思のパターンが絞られてしまう
ふぁぼ(スター)によって表現される意味
- お気に入りである
- 共感している、同意している
- 面白い、笑った、感動した
- 感謝している、ありがとう
- 好きである
- あとで読む、興味深い
いいね(ハート)によって表現される意味
- 共感している、同意している
- 面白い、笑った、感動した
- 感謝している、ありがとう
- 好きである
いいねの意味合いはふぁぼの意味合いに内包されている。 当分はふぁぼの感覚で使い続ける人もいるんだろうけど、後から入ってきた人は「いいね」の感覚で使うことだろう。
当のfacebookはその「いいね」の意味範囲に限界を感じて「よくないね」の導入を真剣に検討するとこまで来ていたりするわけだけど、それとは逆行する形になっている。
Twitter界隈が積み上げてきた文化を損なう
favstar.fm
ふぁぼったー
ツイッターなどで使われる「ふぁぼる」「ふぁぼられた」「ふぁぼった」の意味は? - キーワードノート
Twitterを象徴する機能としてのふぁぼは長いことユーザに受け入れられてきて、そこから派生した様々なサービスや文化が根付いてる。 ブランドイメージとしての星を捨て去ることは、このサービスの尖った部分を丸めて、より力のあるその他のサービスに足並みを合わせますという意思表示になりかねない。
どうしてこうなったか
遡れば「つぶやき」→「ツイート」の変更はどこか日陰めいたTwitterの印象をメジャーなものに持ち上げる点で意味を持っていたと思うし、度重なるUI修正も今振り返れば意味はあったと思う。 アクティビティの導入も新たな人の流れを作れるかもという希望のもとに行ったことだろうし、その廃止も、広く定着しなかったなら保守コストを減らすために仕方のないことだろう。
ただ、今回の「ふぁぼ」廃止に関しては直感的で納得のいく目的が見いだせない。 数年前にも「ふぁぼ」→「足あと」の変更があったけど、あれは翻訳の投票機能がバグっただけで本家の意思表示ではなかった。 今回はアイコンも用意し、公式Webから埋め込みツイートまで含め、全世界同時に実装しているのでまごう事なき仕様変更である。
「ふぁぼはいいねであるべきだ」「スターはハートであるべきだ」というのがTwitter運営の意思なわけだけど、そうなると気になるのは一体何故?ということ。 仮にも上場企業なわけで、運営サイドにとって何らかの利益がなければ当然こうした大規模な仕様変更に乗り切るはずがない。
考えられるのは、他サービスと記号を統一することで、新規ユーザがUIに慣れるためのコストを減らそうという意図だろう。 米大手サービスでいえば、TumblrもPinterestもInstagramもハートマークのいいねを採用している。また、ブックマークを示すアイコンは、feedly等ではしおりのマークだ。ブラウザの「お気に入り」を除けば、Webサービスでどっちつかずの星を採用しているのはTwitterだけ。 ぱっと見て意味が分からないかもしれないものを配置するより、使い慣れた記号、同じ業界で定評のある記号に合わせようということなのかもしれない。
それは確かに理解できる。が、それは本当にそうなのか。 確かに新規ユーザの認識にかかるコストは減るかもしれない。しかし、その裏でユーザの意思表示の幅が狭まることは許容されるんだろうか。 Facebookが実は喉から手が出るほど欲しいかもしれない「幅広い意思表示」を可能にするスターを、Twitterのアイデンティティとしてのスターを、それだけのために捨てる必要はあるのだろうか?
テコ入れは必要なのかもしれない。けどそこじゃないだろうというのが正直な感想。
Twitterの今後について
最近のTwitterが提示する新機能はことごとく失敗しているように思える。 というのも、提示される機能のほとんどが、日本人のTwitterユーザを捕まえてきて問えば10人に9人は「それ要るの?」と即答するようなものばかりだからだ。
今回の仕様変更についてもそう。ふぁぼの意味合いの変化、意味範囲の縮小によって、飛び交う星の数より飛び交うハートの数は減少することが想定されるわけだけど、Twitter社は本当にそれを望んでいたんだろうか。
こうしたことはわれわれの見ているTwitterが米企業Twitterの進出した一地域のローカライズでしかないことに起因しているのかもしれない。米国ではハートの方が受ける、というなにがしかのデータがある可能性はある。
ただ、Twitterの全ユーザ中に占める日本人ユーザの割合は決して少なくない。Twitter社のサービスを享受してくれる生のユーザのうち、少なくない割合が当然のように感じる違和感を受け止めることができていないという時点で、どこか先行きの暗さを感じてしまう。
いっそ日本法人を独立させてしまえばいいのではないか、とも思える。中国のWeiboはほぼTwitterのクローンから始まり、今や本家とは全く別種の文化圏を築いている。
多数の国々、多数の文化圏の人々の生活に根付いたサービスを、ある国、ある文化による単一の価値基準で運営していくことはとても難しいことなんだろう。
追記
と思ったら運営サイドは真逆の解釈をしていた。ハートの方がいろいろな感情を表すことができるんだって。嘘だろー。
TwitterとVineの上にハートが登場です。これまでの星☆アイコンから、いろいろな感情を表すことができるハート♡アイコンに変更しました。 pic.twitter.com/i7gZ5lyHGX
— TwitterJP (@TwitterJP) 2015, 11月 3